渾身のビーンボールが
余裕でよけられたりよ
ただのストレートが
わざわざ当たられて乱闘にされたりよ

コントロール悪いと
使いこなせねぇな
危険球もストレートも

外角低めきわどいとこ投げれりゃ
当たられず三振とれるんだろうが
どうせまた四球か死球だろ

いっそ狙わず投げてみて
行方眺めが乙かもな

弾じゃない気はあるけどな

雨電話(あまでんわ)

雨の降る夜(よ)が更けると決まって
長電話かけてくる子がいた
僕は雨音を聞くのが好き
やがて疎遠になってった
ちょっと彼女が好きだったな

もしかしたらば、あの子には
声が要ったのかもしれない
雨音掻き消し遮る声が

聞いてやったらよかったかな
雨の降る音、好きじゃないの?
聞きたくないの?
どうしてなの?

言ってやったらよかったかな
僕は雨音を聞くのが好き

きっと聞かなくてよかったろう
好きなものイヤと聞くのはイヤ
きっと言わなくてよかったろう
イヤなもの好きと言うのはイヤ

どうしてなのと聞かれても
訳などないかもしれないし
ちょっと彼女が好きだったな
でも雨が好き?
どうしてなの?

今も飽きずに聞いているよ
僕は雨音を聞くのが好き
思い出の細い声がハモる
どんな顔をして出してた声?

場所

家のあるとこに人が住む
家のないとこに人が住む

人の住むとこが暖まる
人の住むとこが冷えていく

暖まるとこに横たわる
冷えていくとこに横たわる

横たわるとこで死んでいく
横たわるとこで生んでいく

死んでった者が住んでいたここ
生んでいく者が住んでいるここ
生れ出る者が住むだろうここ

家があるせいで家がないとこ

光る兄

暗い場所では光る人だ
周囲の人には明かりになる
暗いうちなら
そういう人だ

明るい場所でも光ってるだろう
周囲の人には見えないだけで
暗くなるまで
そういう人だ

昼日中そっとスイッチ切れば
周囲の人には気付けないだろう
切る僕以外
そういう兄弟

ちゃんとした仕組み

ちゃんとした子供は寝ている時間
ちゃんとした大人は働く時間
ちゃんとしたコビトは手伝う時間
ちゃんとした巨人は支える時間

おんなじ時間 おんなじ星で
ちゃんとしてない生き物たちも
それぞれ生きているのです
みんなつながってるのです

死ねば良いかもしれませんね
でも実際は生きています
良いことばかりはありません
そして悪いことばかりでも

次の春

5月半ばの数週間の
得難い適温な時季は過ぎ
もう今朝などはだらしなく
汗染みな腋のクールビズ

染みはやがて模様になり
模様はやがて地図になり
地図は巨大な私になって
地上絵ばりの心霊写真
Googleマップの七不思議に

それをスマホで毎日チェック
忘れ去られたポータル防衛

そのうち次の春が来るのだ
そしたら1年分をリセット
残り時間をデクリメント

うるささ

喫茶店 モーニングサービス
向かいの席には聾者達
多彩な手話の花を咲かせる

話に熱が入ってくると
意味のとれない呻きもあがる
何かの符丁でもあろう
机を叩く音もする

うるさい
素直にそう思った

生きてるものはうるさい
生きてる耳にうるさい
耳の聞こえぬ彼等にだって
私の何かがうるさく響く
添い寝している隣の鼓動が
気になり眠れぬ夜だってある

やめてもらえる筋合いなど
こちらには無いうるささがあり
口を無理やり塞いででも
黙らせるべきうるささもある

黙らせるべきは黙らせ
語らせるべきは語らせ
呑み込むべきは呑み込み
喚くべきは喚く
「うるさい」だけにとどめずに

それは容易いことではないが
なるべくそうして生きていきたい
席を立とうとカップを干すと
現れた底は無理さと笑った

うるさい
生き物じゃないクセに

不在

いないと思われてるうちは

まだいることになる

そのうち思われなくなる

思われなくなるといなくなる

いなくなるとゴールになる


走っている途中は
思われなくてもいる

走っている途中は
いたいのかわからない

心作り

生まれつき
心の少ない体質で
いろいろ不便も多かった

それで本とか映画とか見て
見よう見真似をやってみた

「芝居じみてる」
「AIみたい」

笑われたりもしたけれど
笑った人と仲良くなれた

だんだん見真似が楽しくなった
この楽しさを楽しんでいる
これはそれなり心だろうか