聞香

朝つく嘘は朝の臭いがする
夜つく嘘は夜の臭いがする
朝早く起きて夜遅く寝ると
つけなかったホントに気付いてしまう

君つく息は君の臭いがする
僕つく息は僕の臭いがする
君らしく生きて僕らしく死ぬと
溜めこんでいた息に気付いてしまう

気付いたものの
臭いを嗅ぐと
白昼の誰かの香りがする

専門家

音楽が音楽で終わることに
音楽の専門家が満足してる

文学が文学で終わることに
文学の専門家が満足してる

音楽が音ファックに変わることに
文学が文ファックに変わることに
期待している間は素人

だけどファックの専門家

進化論

進化論が本当なら
蚊はだんだんと
痒くなくなる?
そういう話をしてみたら

蚊は病気を媒介するので
蚊の痒さに敏感になるよう
人間側が進化する
そういう応えが返ってきました

あなたの嫌らしさに敏感になってく
これはわたしの進化なの?
あなたは何を媒介するの?

「愛って名前の病気かな」

お釈迦な草津がげんなりです

正しさ

より長く生き残れる方法
生き物なので
最初はシンプルだった

より多く生き残れる方法
その辺からもう
何かが間違ってく

より多く幸せになる方法
もういい

他の個体が生き物だなんて
殺してみるまでわからねぇし
いちいち殺しちゃコストが高いさ
殺られるリスクも増えるだろ

生き物なので
コストは大事さ

潜人

殺した人に潜る
殺された人に潜る
息が続かなくなったら
水面に戻る

息の続かなさに
苦しんだあとなら
おそらくはバチが当たらない
殺すのをなんとも思わぬと言っても
おそらくはハチに刺されない
殺されるを屁とも思わぬと言っても

蚊にでも刺されたかのように
でなけりゃ人に
殺されもしもせぬような
よくある人で

潜れてねぇじゃん
潜れりゃしねぇよ
軽すぎんだよ、この荷物じゃ
軽すぎんだよ、このオツムじゃ

オムツもオブツも用はねぇよ
用のねぇのが集って来たって

宵待雨

生温い雨に打たれている
これじゃなんにも濡らせない
これじゃなんにも流せない
これじゃなんにも洗えない
これじゃなんにも溶かせない

それでも雨に打たれている
ずうっとここに
立ち尽くしている

曇天越しの薄明かり
最後のカケラが消えるあとまで
こうして立ち尽くしていれば
せめても夜が冷やしてくれよう

欲しがる体温の芯を冷やし
せがむ体液の潤みを凍らせ
きれいに結晶させてくれよう

生温さの中
夜を待ってる

無食系

食べるのをやめたら食費が減らせる
減らした分を家賃に回せる
住むのをやめたら家賃もなくせる
減らした分を着物に回せる
着るのをやめたら公然猥褻
うまくすると全部、手に入る
着る物も住むトコも食べものも全部

でも無職のまんまでも
しばらくは食べて住めて着れて
たまには飲んだり打ったり買ったり
いままでの貯金があるうちは

いままでの貯金は大事だなぁ
これからは貯金が出来ないなぁ

無職だけれど大食漢
これを称して無食系
無銭飲食系ではない
国から見れば同んなじか

五月晴れ

たくさんのものを諦めてきた
諦めたものに諦められた

「こいつにはしょせん俺たちを
諦めずに追う力が無い」

二つの諦めが穏やかに馴れ合い
ポッカリと束の間、晴れた日ができる

五月晴れってのはそういえば
梅雨の晴れ間のことだったよな

そしてすぐまた雨が降る

「諦めってのもそういえば
あきらかにみることだったよな」

諦めたものの声が聞こえる

無塩対応

いじめられた子供が6月のある日
第三児童公園の滑り台のわきで
集めたカタツムリを一つずつ取り出し
丁寧に順序通り踏み潰していると
それを微笑んで見てたナメクジが
「殻の無い僕と力の無い君
どっちが潰れるか競争だ!」と
梅雨空に向かって駆け出したので
子供はようやく思い当たりました
自分に足りないのは塩なんだ、と

気づいたところで仕方がないので
それからはナメクジと
永遠の競争をしています

ほら
あなたのうしろも
ヌラヌラ、テカテカ
してるでしょ?

50歳の負け惜しみ

よく笑うと皺が増えるかもしれない
よく動くと怪我をするかもしれない
よく探すと悪い答えがみつかるかもしれない

ほどほどに笑い
ほどほどに動き
ほどほどに探すのがいい

私は笑わなかった
私は動かなかった
私は探さなかった

私に皺はない
私に怪我はない
私に答えはない
ただ問いがあるばかり

本当に
それでよかったか?

本当に
私に答えはない

高い僕

下を向くしかない日が続くと
空のこととか考えがち

澄んでるだろなぁ
青いんだろなぁ
高いんだろなぁ
雲も白くて

その中を1人、落ちていく僕

考えすぎてボンヤリ歩き
足下の石でうっかり転ぶ

下を向くしかできない日ですら
下の石さえ見れてない

溜め息をつき、せめて下は、と
しっかりと見て歩いてみれば
転がる石の一つ一つに
小さな空が
実は宿ってた

その下からは僕を見上げて
「高い!」「青い!」と
声が聞こえる

んで白い雲、それは君だよ
僕の中でさ、プカプカ浮いてよ
僕は案外、高いらしいし

君をけっして
僕は落とさない
そのために僕は
高い空になる

落ちきれなけりゃ
浮いて見えるし
落とさなければ
高く見えるさ

構図

良い人が良い絵を書き
悪い人が悪い詩を書くのを
弱い人が弱く見ている

それを普通な人が普通にスルーする
スルーできないのは普通じゃないんだね

そこに私はいません
だからどこにでもいます

タネ

咲けない花が
咲く花の
肥やしに
ちゃんと
なっていた

それが
あとから
わかったは
咲く花があった
せいなのか
咲かせる肥やしが
あったせい?

それはタネには関係ない
タネが出す芽に
関係ない

芽を摘む意味にも
関係ない

世界で一番正直な鏡?
割れてるそれです
知ってるくせに
逆に教えて欲しいんすけど
知ってることだけ
聞いてんの、なぜ?
また割りますか?
それもいいでしょ

生意気ね
映すだけのくせして

映えないハエよりマシでしょう?

いいえ、私は、若い蛆虫!

こりゃ降参だ
ちげぇねぇ

殺さなかった虫

自分より劣ったものや
自分より弱いものには
こんなにもやすやすとやさしくなれる
つぶしやすさがつりあっている
やさしさの容易(たやす)い安さと

それは自分が劣っているから
それは自分が弱いから

本当に優れた強いものは
必要な時だけ差し出すだろう
やさしくみえない適量を

劣ったままではいけなかった
弱いままではいけなかった
やさしさはいまはもうやすやすと
自分自身をつぶしかけてる